不妊治療を始めたけれど、子を授からずにやめるのは難しいですよね。私たちは幼い頃から目標を掲げ、それに向かって進み、達成して完成というモデルを積み重ねているので、途中で達成せずして物事を中断することに慣れていません。居心地が悪いというか、やめる決定がまずできない。
さらに、頭が痛い、風邪をひいた、病院にかかり治療して治るというモデルも私たちは無意識に当然のことと思っています。だけど、不妊治療はあくまで補助医療。妊娠する薬はなく、ひとつひとつの「妊娠の可能性をあげる治療」をするものです。どこが機能低下なのかわからないことも多いんです。できるだけのことは不妊クリニックはしますが、病院に行けば妊娠するというわけではありません。
このような今まで通用してきたモデルが私にはあったので、不妊治療を頑張りすぎたり期待した部分がありました。自分の中の無意識に持っているモデルをみなさんも考えてみてください。
先日の「高齢出産のリアル(週刊女性)」の記事でもあったように、高齢であれば珍しくない流産。難しくなる自然妊娠。「いつまでも産める、望めばいつでも」ではなく、リミットはあるということはもう常識になっていますよね。
わかってる・・・だけど・・・
妊娠率が低くなるけれど、「0%」ではないから迷ってしまう。可能性があるなら不妊治療を続けてしまうことありますよね。気持ちをどう片付けていくか、時間もそれぞれです。
私は子宮腺筋症の悪化により子宮全摘出しているので42歳で強制的に妊娠率が0%になりました。その前に不妊治療はやめていますが、もし手術していなければ波がやってきて、「やっぱり産みたい、諦めきれない!」という気持ちがポツンポツンと顔を出したのかもしれません。人間そんなに強くないので、きっと心が揺れたと思います。
その人のタイミングがあるので一律に何歳だからもう妊活は諦めた方がいいとは思いません。ただ、その妊活生活が今辛いなら、何かを変える時だと思います。それは妊活をやめる以外にも方法はあって、夫婦の関係かも、周囲との関係かも、自分の考え方かもしれません。自分はやめたいけれど夫は不妊治療を続けたい、またその逆もあります。
「子供がいないことが辛い」「全部が辛い」「毎日が辛い」と思うかもしれません。私自身、頭の中がミックスされててまさに「子供がいないことが辛い」「子供がいない自分がいや」だったのですが、じっくり考えてみるといろいろ見えてきました。周囲との関係の中で出来上がっていた価値観も大きく影響してました。
最初に戻りますが、いったん目標を掲げてたとしても達成せずやめてもいいんです。そういうこともあるのが妊娠・出産。他のジャンルとは違う、自分の努力でコントロールできなことだと認めることが一歩です。とっても難しいことにトライしていると思いませんか。くじけずに頑張っている。それだけですごいことですよ。
妊娠率が下がる35歳の壁の次には40歳の壁・・・迷いとか、後ろ髪引かれる並々ならぬ思いを私も経験してきていますので、1人で考えるのが難しい人はカウンセラーの手を借りてくださいね。
1975年生まれ。不妊ピア・カウンセラー。「コウノトリこころの相談室」を主宰。28歳に結婚後、妊活をスタート。人工授精、体外受精、10年以上の不妊治療では二度の流産、死産を経験。子宮腺筋症で子宮全摘。44歳で生後5日の養子を迎える。数々のメディアや、大学で講演活動を行うなど、実体験を語っている。これまでの体験を綴ったエッセー、夫婦共著「産めないけれど育てたい。不妊からの特別養子縁組へ」2020年9月出版(KADOKAWA)