児童養護施設のことはあまり知られてませんよね。
私も恥ずかしながら詳しく知ったのは自分が養子縁組を考え始めたとき、養子を引き受けることになったらその子は何処から来るんだろう…という疑問をもったことがきっかけで調べました。
私が知ってることを書いていこうと思います。
親が育てられない子どもは、日本に40,000人以上います。その子たちのうち9割が下記の施設で集団養育され、1割が里親委託や養子縁組の家庭養育されています。欧米では集団養育における後天性障害など子供の発達に影響があるとされ、集団養育から家庭養育に切り替え、9割が新しい家庭で育っています。
(東京都における児童養護施設等退所者へのアンケート調査報告書 平成 23 年 8 月東京都福祉保健局)
0〜2歳 乳児院
2歳〜18歳 児童養護施設
国の支援は18歳までで、高校を卒業する春に施設を退所します。数年前のタイガーマスク現象でちょっとだけ話題になったので知ってる人いるかもしれません。そこからは自力で生きていきます。
「お金もないし、家もない。住む場所を探さなければいけないけれど保証人、いないし・・・。」
「親?会ったことないし。バイトを朝晩かけもちすればとりあえずはお金は稼げる。健康保険?知らない。」
「キャバクラはマンション用意してくれるから、住むところは確保できる。」
これはいままで会った施設の子の声を総合的にまとめた声です。18歳って子供ですよね、狭いでしょ視野。「今」しか見てないと思われるかもしれませんが、そうなんです「今」のことから進むしかないんです。将来のことより、まずは今住む場所、今日食べるお金、普通に心配する必要がない問題が彼らには山積みで、先のことが考えられない。
周囲の大人って先輩くらいしかいません。施設長が親代わり?そんなの学校の担任の先生が親代わりにならないのと同じです。仕事です。
東京都総務局によると、高等学校等への進学率は98.0%、大学等への進学率は 65.4%、ですが、施設出身者の大学進学率は4%ととてつもなく少ないです。住むところも、生活費も大学授業料も・・・とは18歳の少年少女には考えにくいのかもしれません。
彼らは、集団養育で暮らしてきたので、いきなり外の世界でひとりで暮らすのは知識も援助もなく、不安なことばかりです。大学については学費の奨学金制度というものもあります。そういった情報は本来ならば親が子へ与えるのですが、彼らの場合は施設スタッフにかかっています。施設には先ほども書いたように2〜18歳が混在しています。2歳の方が手がかかるのは当然。18歳の相談をじっくり聞いてくれる時間はありません。
そして、お金だけではなく、本当に大事な根っこにあるのは、親という頼れる存在がいないことです。「誰かが自分を見守ってくれてる」という部分がありません。自分だけの誰か、がいないのが当たり前になっています。
集団養育はその子のためになっているのか、一時保護の場は必要です。しかし、その後長期的に施設で暮らすのは果たして彼らにとって本当に幸せなのか。終わりが来るのに。子供のころ(5歳とかそれくらいまで)はみんなで毎日遊んで幼稚園や保育園みたいで楽しそう、に見えるかもしれません。でもこれから長い人生は続きます。
18歳で退所した後の若者から話を聞いたり、ご飯たべたりしてますが、本当に並々ならぬ苦労をしています。すべてが苦労です。生きていくことが苦労です。先ほども言ったようにお金だけの問題ではなく、自分が生きている存在を見失います。いなくてもいいんじゃないか、って思います。
国は18歳まで支援しますよ、と言っていますが、本当にそれで良い結果になっているのか、調べれば調べるほど疑問を感じます。世界基準と比較して、見直してほしい。日本の独自のルールを子供たちに押し付けないで。国連では特に0〜2歳の集団養育は、発達段階で愛着を形成できず後天性の障害が引き起こされると危惧されてます。目に見える問題行動も報告があります。例えばスタッフの気をひこうと髪の毛を抜いたり、自傷したり、頭を打ちつけたりです。自分だけを見て!というサインを0歳の赤ちゃんが送っているなんて、むなしすぎます。
施設養育よりも家庭養育を!という内容のシンポジウムに、里親会の方などと一緒に厚労省もパネリストとして登壇してました。施設の懸念点をぶつけましたが、「持ち帰って今後検討します」などと悠長なマニュアル通りの回答をして帰りました。このアラフォー厚労省男性、1歳のパパです、と自己紹介で言ってましたが、自分の子供を施設に入れられるでしょうか。我が子を安心してずっと預けられない場所なら問題ですよね。
自分のこととして考えてくれればいろんなことが解決していくと思うんだけどな。。。
今後も、私が実際に目で見て感じたものを書いていきます♪
1975年生まれ。不妊ピア・カウンセラー。「コウノトリこころの相談室」を主宰。28歳に結婚後、妊活をスタート。人工授精、体外受精、10年以上の不妊治療では二度の流産、死産を経験。子宮腺筋症で子宮全摘。44歳で生後5日の養子を迎える。数々のメディアや、大学で講演活動を行うなど、実体験を語っている。これまでの体験を綴ったエッセー、夫婦共著「産めないけれど育てたい。不妊からの特別養子縁組へ」2020年9月出版(KADOKAWA)