今日は不妊の最先端医療を追い続けてしまう気持ちについて書いてみます。
不妊治療の技術は日々進化していますよね。体外受精、顕微受精。例えばその他のことでも、卵巣を刺激する薬剤や倍率の高度な顕微鏡、子宮内環境に近い培養液、子宮造影検査の管、採卵する針一本に至るまで様々な不妊治療にまつわる技術や考え方は変化し続けています。
ロバート・エドワーズさんもそのひとり。彼は体外受精の技術を完成させ、1978年世界初の体外受精児を誕生させた人です。妊娠を望んでいる人に光を射してあげたい・・・そんな気持ちだったのかもしれません。2010年ノーベル医学生理学賞を受賞しました。
あれから30年以上、体外受精で生まれた赤ちゃんの世界累計は400万人だそうです!
最近、ミトコンドリアが大きな話題を集めています。卵子を活性化するという救世主。
あらゆる技術を駆使しても妊娠に至らない場合、卵子の老化、卵子の質の問題にぶちあたります。要するに人間(生き物)は老化する、それは内臓と同様、卵子や精子も例外ではなく、どんなに健康な男女でも老化して妊娠しづらくなるということです。言われてみると当然なのですが、その「不可逆性」なことを「いつ」言われるかによって受け止め方に大きな差がでます。妊娠適齢期が過ぎた段階で言われると、不妊当事者は非常に苦しみます。どうすることもできないお手上げ状態ですね。*不妊予防の知識の周知は早急に進めなければいけません。
「できることなら卵子を20代に」「あの頃に戻りたい(卵子だけ)」・・・それは、当事者の叶わぬ願いだったのですが、このたび、ミトコンドリア様が卵子を若返らせてくれる?それは可能なの?!ということで当事者たちはザワザワしています。
ミトコンドリアを使った不妊治療の技術のほかに、ミトコンドリアサプリ、ミトコンドリア体操、ミトコンドリアカプセル・・・世の中ミトコンドリアが溢れています。
過去にも、IPS細胞やSTAP細胞の時にも、もしかして不妊治療に役立つ発見?!と話題になりました。きっと今も妊娠を望む人や病と闘っている人のために研究は行われているに違いないけれど、我ら一般患者がその恩恵を受けるのは数年、数十年先かもしれません。
「もしかしてあの技術なら」と期待する、妊娠率の高いものを追い求めてしまう・・・そんな気持ちはあって当然だし、「こっちの方が確率が上がりますが・・・」と目の前に提示されるとそこに望みをかけてしまうのが人間。。
でも、医療の進歩は日々止まりません。最新医療のニュースが飛び込んできて、その度に「もしかしてこれなら私も」と心が揺れてしまったら、不妊治療は終わりなき戦いになってしまいます。
世の中にはたくさんの生殖技術があるけれど、「自分はどこまでするか」「どこまでできるパワーがあるか」それをしっかり考えることが大切です。
「自分はどこまでするか」=「妊娠するまで!」と目標をもつと、妊娠は受験や就職と違い、自分の努力ではどうにもならないものなので、その設定はしんどくなります。また、「どこまでできるパワーがあるか」はあまり考えることなく不妊治療を続けている人が多いと感じています。
今の状態を自分の胸に手を当てて心の声を聴いてみてください。
全力で不妊治療を精一杯する、後悔したくない!と心に決めているならばいいでしょう。ご自身で納得するタイミングはご自身にしかわかりません。
しんどい、生きている心地がしない、人生がストップしているようだ、いつまで続ければいいか不安、と感じているなら、それは不健康な状態だと私は思います。
「不妊治療をこれからも頑張りましょう!!授かるまで応援しますよ!」と背中を押すことはできません。
誰も決めてくれないから、迷います。でも心の中を見れるのは自分だけ。
あなたの人生を決めることはできないけれど、決めるまでのサポートとしてみんなで話をことはできます。
不妊支援の場がだんだんと増えてきました、たくさん活用してくださいね。
(お知らせ)
●冷えや健康のこと、妊活のことをお話する会があります。イオンドクターお試しいただけます。@吉祥寺
日時:平成28年7月28日(木)13:00~15:00
場所:吉祥寺Sound Cafe(吉祥寺駅徒歩5分)
詳しくはこちら
●コウノトリの会「不妊治療もやもや会」
日時:平成28年8月25日(木)13:30~15:30
場所:白金台いきいきプラザ(白金台徒歩1分)
1975年生まれ。不妊ピア・カウンセラー。「コウノトリこころの相談室」を主宰。28歳に結婚後、妊活をスタート。人工授精、体外受精、10年以上の不妊治療では二度の流産、死産を経験。子宮腺筋症で子宮全摘。44歳で生後5日の養子を迎える。数々のメディアや、大学で講演活動を行うなど、実体験を語っている。これまでの体験を綴ったエッセー、夫婦共著「産めないけれど育てたい。不妊からの特別養子縁組へ」2020年9月出版(KADOKAWA)