私が周囲から受けたプレッシャーについて書きます。
親、親戚、近所の人、上司・・・周囲からの妊娠を願うプレッシャーは結婚2年ほどでピークを迎えました。
結婚当時、父は末期ガンと診断されたため、父の願いが最重要事項。余命3ヶ月と言われ、花嫁姿を見せなければ!と結婚式を早めにしました。結婚式当日には「次は赤ちゃんね」とすでに周囲からのプレッシャーは始まっていました。
「孫を早く抱かせてあげて!!」「赤ちゃんはまだなの?!」と父の友人たちは顔をしかめてせっつくようになりました。不妊治療を始めてからも彼らからの攻撃は加速。仕事を抜け出し病院通いと慣れない不妊治療、夫との温度差が入り混じっていた頃、夫から「君はノイローゼだよ」と言われました。私にプレッシャーを与える人はたくさんいても寄り添ってくれる人はいませんでした。きっとこうやって鬱になっていくんだと思います。
末期ガンの父の願い、
孫を抱きたい。
周囲の願い、
孫を抱かせてあげて、孫は生き甲斐よ。
私の願い、
孫を抱かせてあげたい、一緒に育児をしたい。
それぞれの願いは同じなのに、なぜプレッシャーに感じるのか。それは、誰も気持ちを聞いてくれる人はいなく、ただ「妊娠」という結果だけを連呼していたからだと思います。
妊娠しようとすでに頑張っている人に「いつになったら赤ちゃん連れて帰ってくるの!」と言っても、なんの意味もない、攻める言葉にしかならない。
今妊娠しても10ヶ月後の出産に生きているか、、、、
1日も早く妊娠しないといけない
そんなことを毎月考えていました。ガンと告知された日からタイムリミットを常に考えている生活。死が迫る本人もつらいだろうけど、家族もつらいんです。相当なストレスでした。
「実家に帰ってくる時間があるなら赤ちゃんのこと考えて」父と一緒に過ごすことさえ罪と言われるようになりました。
不妊治療を始めて3年目、人工授精で初の妊娠。しかし8週で流産。
そんな時でも私の顔を見れば彼らから発っされる言葉は「まだ妊娠しないの?一体何をやっているの?」もう殺意を覚えました。。
私が33歳、父は死にました。この日までになんとかしたかったのに、すべてが終わった日でした。
父の葬儀に一番うるさい父の友人から「一番見せてあげたかったのは、あなたの赤ちゃん。」と捨て台詞のように言われました。
こんな日にも責められるのはなぜなのか。友人は父を失って遊び相手がいなくなって悲しいかもしれませんが、私は唯一の家族を失ったんです。これからの人生に大きく関わる出来事なんです。もう我慢ならなず「ずっと病院に通っているの、私だって見せたかった。妊娠はしたけれど流産をした」と勇気を出して不妊治療の事実を言いました。おばさんは「へ〜」とそれだけでした。
昨今、妊娠について義親や実親からのプレッシャーがないという人が目立ちます。羨ましいですね。きっと「不妊」が社会に広まり、妊娠しにくい体質や、不妊で苦しんでいる人がいることが周知されてきたからでしょう。そっと見守ってくれるなんて、ありがたいです。
キャサリン妃の妊娠を国をあげて待ち望んでいる姿を見ていると、相当なプレッシャーだと思い心配なぞしていたのですが、男児を!というと男児を出産し、次にダイアナ妃のDNAを!というと女児を出産。まったく心配ご無用でした。
彼女たちはやはり何かモッているのかもしれません。
七三分けのジョージ王子とシャーロット王女の仲睦まじい写真が公開されましたね。ロイヤルじゃなくていいから、普通に子供の写真を撮ってほのぼのと過ごしたいなぁ〜と思います。
1975年生まれ。不妊ピア・カウンセラー。「コウノトリこころの相談室」を主宰。28歳に結婚後、妊活をスタート。人工授精、体外受精、10年以上の不妊治療では二度の流産、死産を経験。子宮腺筋症で子宮全摘。44歳で生後5日の養子を迎える。数々のメディアや、大学で講演活動を行うなど、実体験を語っている。これまでの体験を綴ったエッセー、夫婦共著「産めないけれど育てたい。不妊からの特別養子縁組へ」2020年9月出版(KADOKAWA)