286月 2015 投稿者 池田麻里奈 日本経済新聞Web刊でも同じ記事が読めます) 結婚してもほとんどの方が共働きの今、不妊治療と仕事の両立は悩みの種です。会社に打ち明けるのはプライベートなことなので躊躇されがちですが、不妊治療(特に体外受精)が長期化すると突然休む、遅刻、早退、など不自然な行動となり、それこそ仕事への信頼を失うことにもなります。 私は綱渡りのような両立をしていましたが、最後はギブアップ。一度も不妊治療の通院について上司に相談することなく・・・退職を決めてしまいました。気持ちに余裕がなかったから、もう迷惑かけれないと思ってました。きっと相談すれば寄り添ってくれた、制度は無くてもいくらでも待遇を考えてくれたと思います。そっと退職しようと思ったのですが事情を話すしかなく、やむなく不妊治療、体外受精をカミングアウトしました。女性上司から「今しかできないから頑張って、応援する」と言われ退職を認めてもらいました。 今振り返ると、自分で自分の可能性の範囲を決めてしまっていたのかもしれません。 赤ちゃんが欲しいという思いは自分の家庭のことだけれど、徐々に、社会全体でバックアップしていく時代になってきてると思います。 不妊治療をとるか?仕事をとるか?という究極の選択の前に、気持ちに寄り添った相談ができる場が職場の中にあればいいですね。前記事(日本でも始まる企業の不妊治療支援)でも書きましたが、制度が出来ればおしまいではありませんね。その制度を運営するのは「人」です。私たちです。不妊支援はまだ始まったばかり、「こうしたら利用しやすいよね」「こんな制度は助かります」と当事者側が声をあげていくことによって人間味のあるよりよい制度になっていくと思います。 戦前から変わらない法律など、いろいろと問題がありますよね。一度決めたことは変えないのではなく、時代とともに柔軟に変化していくもの、でありたいです。 何度か新聞のコメントに協力していますが、今回は一番反響が大きかった。不妊に関係のない人も女性のキャリア問題として大きな興味関心を寄せてくれたようです。「あなただったの!!」と友人から連絡があったり、大変だったね、応援しますよ〜と言ってくれたり。嬉しいですね。 不妊に理解を寄せて親身にインタビューしてくださった日経新聞の西村記者さん、ありがとうございました♪ 池田麻里奈1975年生まれ。不妊ピア・カウンセラー。「コウノトリこころの相談室」を主宰。28歳に結婚後、妊活をスタート。人工授精、体外受精、10年以上の不妊治療では二度の流産、死産を経験。子宮腺筋症で子宮全摘。44歳で生後5日の養子を迎える。数々のメディアや、大学で講演活動を行うなど、実体験を語っている。これまでの体験を綴ったエッセー、夫婦共著「産めないけれど育てたい。不妊からの特別養子縁組へ」2020年9月出版(KADOKAWA)