11月の終わり、「コウノトリの会〜流死産を語る」を開催しました。
このテーマは2回目の開催です。前回に続き満席のお申し込みで、それぞれの想いを抱えて5名の方が参加してくれました。
4年前の私が死産した当時のことを思い返すと・・・
着替えてメイクをして髪をとかして外に出て電車に乗り、人に会うというのはとても大変なこと。感情がコントロールできなく、涙がどんどん溢れてきたりするからです。
集まってくれたみなさん、勇気のいることですよね、来てくれただけでありがとうです。。
不妊治療をしていると、生命の誕生と常に接しています。それは「死」とも隣り合わせということで、悲しい出来事を経験する可能性も高くなります。
流産したときにはどんなことを言われますか?
落ち込んでいる人を見ると「励まそう」と思ってしまうのが人間。何か言わなければ!と思うかもしれません。
・また次頑張ればいいよ
・流産はよくあること
・この子を産む前に流産して命の大切さを知ったよ
流産は珍しくないというトーンで話されることがあります。これについて言いたいことを言わせてもらうと、珍しくないかもしれないけれど、その人にとっては長いこと望んだたったひとつの命なので、、、そこの気持ちに寄り添ってほしいな。
すでに頑張って頑張って頑張って授かった命なので「また頑張れば」という言葉は簡単に聞こえてしまう。「流産はよくあること」だったとしても悲しみが癒えることはないです。実際に無事に産んでいる人がいるのだから、どうして私には赤ちゃんが来ないの?という想いはつのるのです。また、無事に出産した人が過去の流産を打ち明けることは本当に多いです。無事に出産した子がいるから言えることではないでしょうか。その立場とは全く違うので流産仲間のように言われるのは違和感です。
また、初期流産であれば、ごく一部の人にしか公表しないかもしれません。不妊治療をしていると不安で周囲に告げないこともあるでしょう。
妊娠8週だとすると、判定日から4週間お腹の中の赤ちゃんと共に過ごしています。4週間って長いですよ。座ったり立ったりする時も、ずっとずっとお腹の子に気を使って、人とぶつからないように歩き、自転車が突進してくるのをさけ、階段を注意して電車に乗り、ケミカルな食べ物に注意し、コーヒーや氷入りの飲み物はやめ、鉄分をとるためひじきを食べたりして。
周囲の人は、私たち夫婦が小さい命を愛おしく想い、成長してくれることを願い続けた数週間を知りません。お腹も大きくならない初期、流産してもわざわざ周囲に告げることもなく、過ぎていく日々。
そんな時にも「子どもはまだなの?」という問いかけも、日常茶飯事でやってきます。
生まれた赤ちゃんの顔を見ないと父親の実感が湧かないという男性もいるくらいなので、妊娠初期に「父」をどれだけ実感していたかというと、薄いかもしれません。
お腹の赤ちゃんを常に意識して行動していた私の4週間と、普通に走ったり、満員電車に乗ったり、ビールを飲んでる夫の4週間は違う。
このように生活していた空間が違うので、「仕方ないこと」「次に進もう」「15%に起きること」と夫は言い、私を励まし次に進みます。流産した女性の気持ちを同じようには考えられないかもしれません。もし夫が私の4週間を想像することができたら、温度差は縮まったのではないか、逆に私が夫の生活を想像できれば、もっとわかるように気持ちを伝えていたのではないか。温度差は、気持ちの伝え不足から生まれている、と振り返ります。
その子の「父」「母」は私たちしかいませんから、できるだけ温度差を縮め、悲しみを分かち合いたいですね。
よくあることだから・・・という人はさすがにいませんでした。
しかし今度は、何を言えばいいのかわからない、その話はしない方がいい、そっとしておこう、という周囲の反応が寂しく思いました。
流産と同様に、悲しみの過小評価があり、「早く忘れなさい」「赤ちゃんに会わない方がいい」と身近な人に言われることもあります。実母、義母や医師からです。誰かの親であるなら、子どもの死を早く忘れることはできないことくらい想像してほしい。
死産とは、お産をして赤ちゃんを産むんです。亡くなっている赤ちゃんを。産声はなく、今後赤ちゃんとの人生はありません。思い出が増えることはなく、火葬する間までの残された時間しかありません。たとえ赤ちゃんが亡くなっていても、会いたいと願っていた赤ちゃんです。
私は、産んだ人の気持ちをもっともっと尊重してほしいと思います。マニュアルはありません、産んだ人が赤ちゃんに「会いたくない」というならば、会わなくても良いでしょう。でもあとで「会いたい」気持ちが湧いてきても2度と叶いません。
死産にはいろいろな原因がありますが、通常の妊婦検診のときに「お腹の中で心臓がとまっています」と突然告げられるケースもあります。頭はパニックになり、先々のことをじっくり考える時間や余裕などありません。陣痛もやってきます。
隣に寄り添っているご主人や、もしかしたら実母などが病院にいる場合は、そっとできることを提案してほしいです。
・足型、手形
・髪の毛
・へその緒
・写真
・病室で夫婦と赤ちゃんだけで過ごす
・洋服を着せる
・母乳をあげる
私は全てではないけれど、できることを助産師さんの協力を得てしました。
「病院へ行く、空港に向かってる」と実母がいきなり言いましたが「夫婦で過ごしたいのでそっとしておいて」と断りました。
入院して数日間は自分の欲求を叶えさせてもらいました、夫に感謝してます。
「コウノトリの会〜流死産を語る」では、みんなで涙を流しながら話をしました。流産、死産のことを語る時間って作らないと日常の中には存在しないですよね。背景は違うけれど、赤ちゃんを失った当事者という見えない絆で語りました。
帰り道、街はすっかりクリスマス。参加者さんが、少しでも心が穏やかになり、このイルミネーションを見て「綺麗だな・・・」と感じてくれればいいな。
1975年生まれ。不妊ピア・カウンセラー。「コウノトリこころの相談室」を主宰。28歳に結婚後、妊活をスタート。人工授精、体外受精、10年以上の不妊治療では二度の流産、死産を経験。子宮腺筋症で子宮全摘。44歳で生後5日の養子を迎える。数々のメディアや、大学で講演活動を行うなど、実体験を語っている。これまでの体験を綴ったエッセー、夫婦共著「産めないけれど育てたい。不妊からの特別養子縁組へ」2020年9月出版(KADOKAWA)