妊活のこと、誰かに話せますか?浅い話し程度ならば友達や同僚に言えるでしょう、「子どもほしいけどなかなかできないんだ〜」くらいなら。でもそのあと、なんて続きますか?
「そうなんだ〜、応援してるよ、頑張ってね、早く子供授かればいいね〜」ですよね。
ありがたい言葉です。でも、どうしてその状態がつらいとか、どんなことが不安なのって深い話まではしない。できない。
さらに治療のことがわかっていないと、
「体外受精しても分割がうまくいかなくて胚盤胞にならない、移植が2回とも見送りでこれからどうしたらいいのか・・・」と言っても、これがどんだけの状況なのか理解できないから、なかなか伝わらない。
「このまま治療がうまくいかなかなくて子どものいない人生を考えるとつらい」というのも、子供がいる人には理解するハードルは高いし、言いにくいです。
深い内容のことまでは到底ランチタイムなどでは周囲に言えません。でも大抵聞かれるのはランチタイムに「子供作らないの?」って軽く聞かれます。
そして相談しやすさでいうと、「昔からの友達」よりも「知らない誰か」そして「同じような経験をした誰か」の方が話しやすいことがあります。
私も実際、不妊や死産のことを同じ経験者にしか語れなかったので、その語れる場所を作りたいなと思ってカウンセラーをしています。
しかし最近、私がカウンセラーをしていると知り、こんなことを言われました。
「友達に相談すればいいじゃない、おかしいでしょ友達に言えないことなんてそんなの友達じゃないでしょ」と。
「悩みって、友達だからこそ言えないこともあるんだよ」と私が言うと、
「ないないない、ないって、カウンセリングを受ける人なんて弱い人間だよ!」と、、、
私はこの男性は幸福だなって思いました。ある意味、カウンセリングが必要ではなく自分で解決できる問題しか今までに起こってないんだから。未婚40代。悩みは彼女がほしいこと。
良いんです、この男性がカウンセリングを利用しないなら。必要ない人に押し売りしてません。
ただ、世の中に必要な人はいて、突然その必要な状況に陥る人もいるの。生まれてからたくさんの経験をしていると色々あるんです。あなたが経験してないことを経験している人もいます。
やっぱり・・・人ってどの大学卒業とか肩書きじゃないんだなぁ〜、って思いました。すべての原点は、「世の中には色んな経験をした人がいる」「人には見えない背景がある」ってことを、想像できるかどうか。
一通りカウンセリングについての批判が終わったところで、私から
「例えば家族が癌などの病気、もしくは自分が病気でもいいし、子供が病気になった、他の人にはわからないつらさがあるでしょ、震災の件もそうだし、子どもを無くした人など、当事者同士が語ったり相談にのって分かち合うものもあるんだよ」と言うと、
「あ〜〜〜〜病気はね、それはつらいわ、子ども無くした人の気持ちなんて絶対わかんない、つらいつらい!」といきなり・・・ほんと軽い言葉で賛同してきた。
ここまで丁寧に伝えると「わかるわかる!」と言う、なぜ最初に全否定なのか謎。
でもま、、、この人に相談しようなんて思いませんけどね。彼に深刻な相談をする人はきっといないのでしょう。だから彼はずっと人の深いところにある悩みを知らないで生きてきてしまったのかもしれません。
私たちが日々暮らしている社会にはいろんな人がいる、だからこそ安心して話せる、相談できる場が貴重なんです。不妊クリニック主催の妊活当事者だけの患者会に初めて参加した時、話しやすかった、心が休まった感覚はそのせい。
世の中には彼のように“悪気無く”“悪意なく”何でもポンポンと口に出して人を傷つけてしまう人がたくさんいます。自分には経験していないつらい経験をした人がこの世に存在するんだということを知って、友達がそうかもしれないと想像できるようになれば、もっと社会は優しくなるよねー。
「カウンセリングを受ける人は弱い人?」
私はカウンセリングを利用する何人もの人に会いましたが、「弱い人」と思ったことはありません。とてもつらいことがあったけれど、どうにか前に進みたいなって、何か自分でできるヒントを見つけたいと思って、自分でカウンセリングを探し連絡ができる支援につながる行動ができる力のある人です。頑張っている人です。
カウンセリングが必要な人に届くよう、私もがんばって活動していきますっ。
(3月のコウノトリの会お知らせ)
1975年生まれ。不妊ピア・カウンセラー。「コウノトリこころの相談室」を主宰。28歳に結婚後、妊活をスタート。人工授精、体外受精、10年以上の不妊治療では二度の流産、死産を経験。子宮腺筋症で子宮全摘。44歳で生後5日の養子を迎える。数々のメディアや、大学で講演活動を行うなど、実体験を語っている。これまでの体験を綴ったエッセー、夫婦共著「産めないけれど育てたい。不妊からの特別養子縁組へ」2020年9月出版(KADOKAWA)