こんにちは。庭でアゲハチョウの幼虫を見つけたのですが、私の良かれと思った不適切な行動により大量の蟻に攻撃されて死んでしまいました。とても落ち込んでいます、ごめんなさい。
さて、今日はアウティングについてです。
アウティングってなに?
アウティングとはその人の秘密を許可なく他人に暴露することです。特にLGBTの性的マイノリティに使われています。
一橋大学アウティング事件
一橋大学の学生のAくんが自身がLGBTであり、Bくんに好意があることを打ち明けました。Bくんはそれを大勢のLINEグループで暴露し、Aくんは大学に相談しましたが適切なケアを受けられず投身自殺をしました。先日参加した講座「普通ってなに〜違うことを認め合う」でも当事者の登壇者がこの件について触れていました。とても悲しいことです。現在も大学側と遺族は裁判中。
他人に知られたくないこと
公にできないことってきっとみんなもあると思うんですよ。その中でも「不妊」と「LGBT」はマイノリティという共通点があるので状況とか気持ちが似ています。ここでは不妊目線で書いてみます。
私が不妊治療を始めた30歳の時、その事実を誰にも知られたくなかった。普通を求めていたので、普通に成りすましてました。病院の受付の人に「不妊検査で来ました」と告げることすら抵抗がありました。病院なのに・・・。
できれば公にしたくない。なぜなら、「子供できない身体なのね、かわいそう」という同情の目で見る人がいるからです。「どっちが原因なの?」と医者でもないのに興味本位で聞いてくる人がいるからです。
自分を理解してくれる親しい友人に妊活中と打ち明けることはあっても、すべての人には言いません。今でも「お子さんはいるの?」もしくは「何歳?」と聞かれるがあります、シンプルに「いないです」と答えます。流産、死産のことは特に言いません。言ったら場が一瞬凍りつく経験をしているからです。
自分ひとりのことではなく子供のことは夫婦のことですので、夫にも関係してくること。妻だけが勝手に公にはできないという事情もあります。
でもこんなことない?
いつのまにか知れ渡ってる
例えば親に、「妊活がんばっている」と話したことが親戚に広がっているケース。「赤ちゃんできないで悩んでるの?」「これ妊娠に良いわよ」と親戚から突然言われる。思いもよらぬスピードで拡散されていく。
母はなぜ勝手に親戚に話したかというと、良い病院はないか調べるために子供いる親戚に聞いたらしい。不妊当事者が抱える悩み、他人と違う、普通じゃない、私はだめなんだ、同情されたくない、という根底にある気持ちを理解していないからペロっとしゃべっちゃう。
一言、良い病院あるか親戚に聞いてみようか?と本人にお伺い立てればよいことなのに、それをしないで広めてしまう。これはよくある事例です。
アウティングする側に罪の意識はない
実は私も経験があります。夫の会社の部下夫婦と食事してる時、奥さんが「私の同僚があなたと同じ不妊クリニックに通院していました」と言いました。え?誰?名を聞いても全然わからない。通院している病院はブログでは明かしてない。なんだかモヤモヤ。
後でわかったのは、ボランティア団体のひとりでした。数十人もいるので多分1回しか話したことないけどそこで通院していることを言ったのかもしれません。10年くらい前です。それを夫の会社関係者に言うなんて・・・なんでだろう怖いです。
現在私は不妊ピアカウンセラーなので当事者であることは隠してません。それはクライエントのためです。
夫は不妊治療をしている!と会社で公に宣言していません。一般人です。そもそもすすんで宣言している人そんなにいないよね。病院名も、不妊であることもいつの間にか暴露されていたんです。本当になんでだろうしかないです。
自分がつらくなくても他人もそうとは限らない
ママ友にいろんな人いるように、偶然にも不妊になった人にもそれぞれの考えがあります。不妊をつらいと思わない人、不妊治療を前向きにポジティブにしている人もいます。
また、不妊経験を公開するかどうかには「不妊治療後に無事出産した人」と「まだ妊活中」の人には大きな大きな差があります。彼女は出産していました。一件落着しているんです。通院してた病院だって体外受精の回数だって、なんならいくらお金がかかったかもなんでも話せちゃう勢いでしょう。
自分のことを自分が公表するのは自由だけど(夫の許可は必要だけど)他人が不妊だということを勝手に言われて気持ち良い人はいないと思う。恥ずかしいことではないし、悪いことをしているわけではないのはわかっているけれど。
いま、facebookやinstagramのSNSで自分の情報が垂れ流し状態ですよね。だけど友達限定だから投稿している内容ってあるよね。人の口に戸は立たずというけれど、ここでアウティングを考えて欲しい。最低限のモラルやマナーは失わないで欲しいな。
1975年生まれ。不妊ピア・カウンセラー。「コウノトリこころの相談室」を主宰。28歳に結婚後、妊活をスタート。人工授精、体外受精、10年以上の不妊治療では二度の流産、死産を経験。子宮腺筋症で子宮全摘。44歳で生後5日の養子を迎える。数々のメディアや、大学で講演活動を行うなど、実体験を語っている。これまでの体験を綴ったエッセー、夫婦共著「産めないけれど育てたい。不妊からの特別養子縁組へ」2020年9月出版(KADOKAWA)