去年の12月の年末、世の中が賑わう中に子宮全摘出手術をしました。
私はその頃、金継ぎ教室に毎週通っていて、地味でしょ?
金継ぎする前よりも素敵になる器にどんどん魅了されていました。
手作業を進めている時に何気ないポツポツとする会話も楽しく、いつも和やかな空気が流れていて居心地の良い空間でした。それは先生のお人柄が作り出していたものでした。年齢も、職業も、過去もバラバラ。偶然集まった金継ぎファンはすっかり先生のファンに。
生徒さんの中にマダムと呼ばれている年齢不詳のやはりマダムとしか表現できない美しく、華やかで、品があって、絵皿の趣味も抜群の女性がいました。私が教室に入会後、優しく親しくしてもらい、会うのが楽しくなる不思議な魅力のある女性。
1月の教室をおやすみすることを作業中にみなさんに話したところ、「手術ってあなたどこか悪いの?」という話になり、なんとなくこの場所では言ってもいいかなと思えたので、「実は子宮を全摘するんですよ。。」と話すことに。私が過去に不妊治療をしていた事はやんわり知られていましたので、先生もマダムも他の生徒さんも、「そうなのね、それは大変ね、そんなに子宮腺筋症はつらいのね」という温かい雰囲気で聴いてくれました。
その時のマダムの「よく決断されましたね」という一言がとても心に残ってます。
自分の決断って、間違っているのか間違っていないのか、あとで後悔するかもしれないし、しないかもいしれないし・・・100%自信があることではなく、子供が欲しかったから心残りはもちろんありました。かといって手術をしなければ子供が産めるわけではないのだけど。
マダムの言葉の中には、葛藤はあったけれど手術という選択をしたのね、あなたの勇気ある選択を尊重するわ、ということが含まれているように感じて手術に前向きに臨めました。
素敵な大人の女性です、憧れです。そんな人になりたい!
この話は今年の大学の授業でも「嬉しかった声がけ」として取り上げさせてもらいました。「よかれと思って発言」が多い中、私の支えになった言葉でした。
今日、マダムが亡くなったと知らせがありました。
とてもショックです。マダムも手術を受けていて、その結果亡くなったということでした。私は自分の相談ばかりしていて、マダムの体調不良のことなどは全く気づかなかった。
なによりの心残りは・・・「マダムの言葉が支えになりました、あの時とても嬉しかったです」と伝えてません。
人との出会いは偶然で、時の長さではなく深さですね。こんなに悲しいなんて。どうしたらいいのでしょう。もう伝えられないのに今日はずっとそのことを考えています。「次はちゃんと伝えよう」はもうないんです。生きている間に伝えるしかないのに。。マダムありがとうございました。
生命保険の営業マンが「朝、ケンカしたまま出勤した旦那様が交通事故で亡くなるかもしれません」という営業トークはよくありますね。あんなに元気で明るいマダムが、どんな人でもあっけなく死んでしまう。
ありがとう、ごめん、伝えていこう。。
マダムが、素敵なお皿ねと言ってくれた私の第1号の金継ぎ皿にマダムのような華やかな花を供えて。
1975年生まれ。不妊ピア・カウンセラー。「コウノトリこころの相談室」を主宰。28歳に結婚後、妊活をスタート。人工授精、体外受精、10年以上の不妊治療では二度の流産、死産を経験。子宮腺筋症で子宮全摘。44歳で生後5日の養子を迎える。数々のメディアや、大学で講演活動を行うなど、実体験を語っている。これまでの体験を綴ったエッセー、夫婦共著「産めないけれど育てたい。不妊からの特別養子縁組へ」2020年9月出版(KADOKAWA)